○相続のお話―相続放棄
相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)が有していたすべての財産(不動産や預金など積極財産や、被相続人の借金、保証債務など消極財産)を一切受け継がない、という選択を相続人がすることです。その方法は民法に定められており、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述する方法で行います。それ以外の方法はありません。
例えば、相続人間の話し合いの中で「自分は一切関わらない。」等の意思表示をしたとか、遺産分割協議書に「一切放棄する。」等と書かれてあり実印も押してあったとしても、それでは相続放棄をしたことにはなりません。相続放棄の実益に被相続人の追っていた負債から免れることがあるとすると、これでは免れませんので、ご注意ください。
相続放棄できる期間は「自己のために相続の開始があったことを知った」ときから3か月と定められています。必ずしも被相続人が亡くなったときから3か月、であるとは限りません。
また、相続放棄は、一度してしまうと撤回することはできません。「そんなに遺産があるなんて知っていたら相続放棄はしなかった。」というような、錯誤無効の主張もできません。
取消も、民法919条2項による場合(能力の制限による取消や詐欺・脅迫による場合)しかできません。
ですので、相続放棄されるときは良く確認なさってくださいね。思わぬところに隠し資産が、なんてことや、実は保証人になっていて・・・ということもあります。3か月では足りない場合は、熟慮期間の伸長の申立てもできます。
ただし、民事訴訟において、相続放棄の効力を争うことはできます。
また、相続財産の処分行為をすると、相続を承認したことになり、相続放棄はできなくなります。処分行為とは、例えば被相続人名義の預金の引き出しや、被相続人が請求権者である入院保険金などの給付請求(死亡保険金の請求など、受取人が相続人であるものを除く)、動産・不動産の処分、などです。
但し、預金の引き出しと言っても、被相続人の(一般的な範囲の)葬儀費用に充てた、とか、交換価値の無い動産を形見としてもらった、程度であれば、相続を承認したとはならないでしょう。
相続放棄は決して難しい行為ではありませんが、論点は多々ありますので、専門家に相談されるのが良いかと思います。
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